年賀状・撰2009 BEST3
2009年、柳沢家および究建築研究室あてに届いた年賀状BEST 3である。
(企画主旨はこちら)
まずは、年末の忙しい時間を割いて年賀状をつくり送っていただいた全ての方に感謝の意を表したい。「選考」「優秀」などと、上から目線で何様や、という向きもあろうが、あくまで年賀状に込められたメッセージを真摯に受けとめようとする姿勢に基づくもののと、ご容赦願いたい。
さて、選考作業は連れ合いと二人で昼飯休憩の際に行った。
対象は年賀状のデザイン(定型文として印刷されたテキストは内容も含む)として、手書きメッセージの内容や差出人との関係の疎密は、考慮しないこととしたが、何をもって「優秀」とするかは、明快な選考基準を特に定めないまま開始した。
まず一通り眺めながら、こりゃなかなか面白い、とフックのあるものを選ぶ一次審査。30枚程度が浮上。その中からさらに、10枚程度にしぼる二次審査。
二次審査は、我々審査員がどのような年賀状を評価している(お気に入り)か、ということが次第に赤裸々になってくるのが楽しい。「審査」という作業は、常に自身の価値観の問い直しを伴なっている。
30分に及ぶ上記のような綿密な審査を経て、11枚の「優秀年賀状」を選出した。
そのうち、栄えある第一回のBEST3に選ばれたのが、以下である。
●最優秀作品 1点
肉である。
はじめ、バーベキュー・レストランのDMかしら、と思った。
それが干支にかけた「牛肉」であることに気付いたのは、しばらく時間が経った後であった。
正月にふさわしからぬしたたる肉汁の生々しさに加え、何とはなしにめでたい存在であるはずの干支の肉をさぁ食いやがれという、「年賀の死角」から打ち込まれた、朗らかかつ不届きなカウンターパンチであった。
しかしそこには、「人間は自分の楽しみのため、この『めでたい』正月にすら、『干支』としてもてはやしている動物さえも、殺し食ってるではないか」、という正月の矛盾を鋭く突くメッセージさえ暗に込められている、のかもしれない。
写真のクオリティが非常に高いため、「ロフトで売られてる既製のデザイン年賀状ではないか」という疑義も出たが、その後本人に直接確認したところ、自ら買った肉を焼いて撮影したのだという。
その手間のかけ方が素敵である。
作者の方には、是非今後とも、寅年版、卯年版と続けて欲しいと願うものである。
(来年はワシントン条約に気を付けて)
○種別:「干支」
○差出人:「肉好き」(本人談)のデザイナー
●優秀作品 2点
写真が圧倒的多数を占める「家族近影」タイプの中で、イラストのかわいらしさが抜きん出ていた。
「家族近影」は、「干支」と並ぶ年賀状の二大勢力であるが、「作品」として鑑賞に耐えるものをつくるのはなかなか難しい、と審査員も今年はじめて実感した。
写真以上に差出人家族の温かそうな雰囲気・人柄が伝わってくるこの愛らしいイラストは、友人のイラストレーターによる描き下ろしだという。
○種別:「家族近影」
○差出人:WEB雑貨店の店主さん
「はなのすきなうし」のような、とぼけた牛の表情もよいのであるが、入賞の最大のポイントは、手刷りの版画であること。
小学生の頃、年賀状といえば版画であった(またはイモ版)。私も中学生くらいまでは毎年版画で作っていたが、次第に面倒くさくなり、やめた。
版画の年賀状は少なくなったものの、今も一定数届く。偉いなあ、と思う。
しかし今年、そのほとんどが、刷った版画をスキャンしたのをインクジェットプリンタで印刷したもの、であることに気付いた時は、やや複雑な気持ちになった。
版木を彫るだけでもすごい事だと思う。スキャン&プリントであろうと今のプリンタの性能であれば、ほとんど原図に遜色ない。だが、しかし。
版画は、彫る楽しさと苦労もさることながら、刷る時の緊張感が醍醐味ではなかったか。一枚の版木から異なる風合いの版画が刷り上がるところが、素人版画の魅力でなかったか。うーむ…、ノスタルヂアか。
手刷りのものは、今年この一枚だけであった。
インクを吸ったハガキの反りが新鮮に見えた。
○種別:「干支」
○差出人:布バッグのデザイン・制作をしている方
いちおう、あと8作品あり。
Tags: 年賀状 | MEMO 雑記・ブログ | 09.01.11 | (0)