究建築研究室 Q-Labo.
究建築研究室 Q-Archi. Labo.|京都の建築設計事務所

2011年11月: 究建築研究室 Q-Labo.|https://q-labo.info/2011/11/
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屏山書院 병산서원:安東, 韓国, 2006

韓国は安東にある屏山書院(日本語の公式サイトがある!)

有名な河回村(ハフェマウル)のほど近くの高台に建っている、李朝時代の学校である。16世紀に建てられ、文禄・慶長の役で焼かれた後、1607年に再建されたものという。
(日本語での簡単な解説はこちらのページにわかりやすくまとまっている)

近世の地方豪族による子弟教育の場という点で、日本における閑谷学校に近い。儒教をベースとすることも共通する。いずれも教育の場にふさわしい質朴さと、周辺の地形・環境を活かした開放的な空気を兼ね備える、素晴らしい建築だ。


アプローチ


門をくぐると階段があり、
晩対楼という高床式の建物の下をくぐって中庭へ至る。


晩対楼の床下。
礎石は置かれているが、掘立を思わせる曲がった丸太の柱が立つ。
これを書くために久々に開いた「韓国の民家 (韓国の学術と文化20)」によれば、これはウムマルという形式の床であるようだ。

「マル」とは、高床となった板張りの部屋あるいは板張りそのものを指す語で、「高い」という意味もあるという。マルは夏を旨とした開放的な造りで、韓国の民家建築においては、土間式で閉鎖的な冬を旨としたオンドル房と対をなす建築形式である。

柱の間に架かる床梁が長クィトゥル、長クィトゥル間にかかる小梁が童クィトゥルと呼ばれる。床面は、この童クィトゥルの側面に堀った溝に庁板(床板)を挿し入れることで作られている。木材はいずれもマツであろうか。
この床を上(室内側)から見ると、日本でいうところの「朝鮮張り」の床となる。


四棟の建物が中庭を四合院のように囲んでおり、スカスカの晩対楼越しにかなたの川(洛東江)と山(屏山)をのぞむことができる。


晩対楼へ上がる、巨木を削り出した豪快な階段。


晩対楼。長大な板張りの高床(マル)の周囲に柱がめぐり屋根がかかっただけの単純な構成で、全周がフルオープン。建具も入っておらず開放感は比類ない。
欄干のデザインからして船をイメージさせる。
空中に浮かんだ船のような建築。


ウムマル、いわゆる「朝鮮張り」である。
床がそのまま構造体であるため、床板は非常に厚い。「朝鮮張り」の味わいは、この厚い床板の生む素材感というか触感によるところが大きいように思う。単なる張り方のデザインではないのだ。

床梁の上に床板をのっけるのでなく、わざわざ床梁の間に床板を差し込んでいるのは、たぶん釘無しで床をつくるためであろう(この時代に釘があったかどうかは知らない)。


天井(屋根裏)。
丸太の垂木が扇状にかかり、垂木間は漆喰のようなもので塗り込められている。
日本では見たことがないスタイル。
左官が使われているのは微妙に曲がった丸太のカーブにあわせて仕上げるためと推測する。大工仕事でこの曲線についていくのは大変である。
木の野地板が見えてる日本家屋の屋根裏と比べると、とても柔らかで明るい印象を与える。


晩対楼の中庭を挟んで、正面にたつ立教堂。メインの教室だったそうだ。
基壇の側面にあいている穴はオンドルの煙道か?(未確認)


立教堂内部。板張りの広間の両脇に、漆喰で塗り込められたオンドル房が並ぶ(寝殿造を思わせるなあ)。
開口部は床に座ったときに丁度視線が抜けるような高さに設けられている。窓台は低めに、座って肘を掛けるのにちょうどよい高さとなっている。
日本の伝統建築ではあまりこういう窓の開け方をしない(ような気がするんだけどどうだろう)。些細なことだけれども、そのような違いに彼我の住文化の差を読み解く手掛りがあるようで面白い。


立教堂より晩対楼を見る。

| MEMO 雑記・ブログ , PICTUREs 旅と建築 | 11.11.30

枚方TK邸:基礎工事

この間、地鎮祭を執り行なった枚方TK邸は、地盤改良(柱状改良)を経て、現在は基礎工事の段階。

枚方はほとんどのエリアが丘陵地帯なので、戦後に開発された住宅地はたいてい斜面を造成して作られている。そのため、敷地の中に切土部分と盛土部分が混ざっていることが多いようだ。切土部分の地盤は良好だが、盛土部分は結構弱いので、地盤改良が必要なケースがほとんどだという。TK邸の敷地も、盛土部分が一部あり地盤改良(柱状改良)が行われた。

京都はと考えると、おおむかしの京都盆地は湖だったため、盆地の表面は堆積土砂で覆われており、そういった地面というのは、地盤の質としては強度がある方ではないはずである(たぶん)。
けれども京都市街中心部だと、木造2階建て程度であれば地盤改良が必要になるという話はあまり聞かない。やはり何百年も人が住んでると、地面も締まってくるということなんだろうか。

今回のTK邸では、ちょっとした敷地の起伏を家の中にとり込んだり、家の中に土間を貫通させたり、子供たちがぐるぐる走り回れる仕掛けを設けるなどして、小さい家の中に複雑な空間体験をパッケージングすることが、テーマのひとつとなっている。

そんなわけで基礎にもその複雑さが反映していて、この規模の住宅としてはかなりややこしめの基礎形状になっている。
なんだか遺跡みたいで格好いいなと、模型を見ながらニヤニヤしたり。

Tags: | MEMO 雑記・ブログ | 11.11.29 | (0)

GD邸:オープンハウス御礼

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10月30日(日)
GD邸オープンハウスの日。あいにくの雨にもかかわらず、約70名+お子様数名にお越しいただき、盛況のうちに終えることができました。皆さま、お忙しいなかありがとうございました。
その賑わいぶりを写真でお伝えしたかったのですが、何と該当する写真が1枚もない。私、すっかり大事な仕事を忘れておりました…。というわけで、チビ1号2号を「室内縁側」に座らせてパチリ。
この日は終日太陽が顔を見せなかったので、トップライトから光が降り注ぐ様子を見ていただけなかったのが残念。また、日没後照明を灯した様子もなかなか不思議な雰囲気があり、できれば見ていただきたかったです。

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多かった質問は、ガラスや建具や壁など、どれが古くてどれが新しいのかということ。ディテールについては、折をみてまたご紹介したいと思います。

今回のプロジェクトでは、
きめ細やかな施工管理をしていただいた、エクセル住宅建設の岸本さん山内さん、
バラ板貼りなど渾身の仕事ぶりが頼りになる、大工の高尾栂佐さん、
キッチンを始めとして素材から納まりまで提案いただいた、マエダ木工さん
初の銅襖製作にチャレンジしていただいた、かみ添さんと表具師藤田さん、
吹抜けのデスクと本棚製作で指物で培われた繊細な技が光る、木工作家兵働知也さん、
こそげ仕上げにお付き合いいただいた、左官の山口さん、
複雑な配線工事に対応していただいた、堀部電工さん、
屋根やトップライト製作の板金桐畑さん、
お名前を挙げきれませんが、この他にもたくさんの方にご協力いただきました。

また、交換せざるをえなかった建具や照明器具については、
井川建具道具店さん、タチバナ商会さんなどにお世話になりました。

最後に、
設計半年+施工期間半年という、改修工事としては長い時間を要しましたが、とても楽しく仕事をすることができました。細部に渡るこだわりには、私たちも学ぶところが多かったです。このような機会をいただきましたクライアントのAさんBさんに感謝します。
(柳沢・ヒショ)

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Tags: | MEMO 雑記・ブログ | 11.11.05 | (0)