究建築研究室 Q-Labo.
究建築研究室 Q-Archi. Labo.|京都の建築設計事務所

2009年05月: 究建築研究室 Q-Labo.|http://q-labo.info/2009/05/
Copyright © 柳沢究 Kiwamu YANAGISAWA, 2008-2017

東福寺へ

2009/5/18〜5/24

5/24(日)
一家で東福寺にある戸田直美さんの家にお邪魔して、シェフ・タイチロウ氏の手による昼食(とビール)をご馳走になり、そのまま午後の談笑。戸田夫妻は小規模な町家を丁寧に(という言葉がとても似合う)住みこなしていて、とても気持ちがよい時間を過ごす。

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ミュンヘン山猫

2009/5/18〜5/24

今週の映画:
ミュンヘン』2005
2時間半ひとときも息のつけない展開。サスペンスドラマとして素晴らしいクオリティ。でもコメントには苦しむなー。9・11に繋がる「憎悪と報復の連鎖」がテーマ、というと僕らには妙に観念的で現実感が薄く感じられてしまう。個人的には、この映画はそこのところを、「人を殺すことの気持ち悪さ」というもう少し身近な(?)感情を通じて、より実感に近づけさせてくれた(気がする、と控えめに言っておこう)。

山猫』1963
映像はキレイだったし、含蓄と哀愁に富んでいるのも分かったけど、楽しみきれなかった。もう少し年をとってから見ると違うかもしれない。
実をいうとクラウディア・カルディナーレが目当てで見た。でも『ブーベの恋人』の可愛らしさに比べると、ちょっと怖かった。

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形の文化会

2009/5/18〜5/24

5/23(土)
形の文化会大会参加のため、朝6:30の新幹線で東京へ。この間たまったポイントを使ってグリーン車にグレードアップ(どうせならもっと混んでる時間帯にすればよかった)。N700系だったので設備も最新で実に快適。飛行機のエコノミーよりずっといい(こんなページがありました。すごいな)。眠かったけれど折角なのでノートPCを広げて、報告書の作業などしてみる。

形の文化会では、高木隆司先生の中央アジア石刻絵画分析の発表があって、僕も共同研究メンバーに入ってるので、その聴講が主目的であった。


他に興味深い発表としては、まず、青森県立美術館で実施されたこどものためのワークショップの報告で、美術鑑賞に制作体験を組み込むというもの。実体験としてもよくわかるんだけど、制作側の視点が少し入るだけで鑑賞の視線にぐぐっと深みが増すんですよね。青森県立美術館の話をもっといろいろ聞きたかったけど、発表者の方は懇親会に欠席だったので残念。

あとは、中川素子さんの、妊娠と出産をモチーフとする古今東西の美術品スライド百数十枚による「妊娠・出産の美術史」が大迫力であった。個々の作品、例えばアンジェリコの「受胎告知」ダヴィンチの聖アンナ森村泰昌松井冬子の作品(実物は見たことが無い)等は知っていたけど、これらがある意図をもって配列されると、特に解説などが無くても、父権と母権のせめぎ合いの歴史とか、妊娠・出産観の変化とか、女性のパワーの向上とか、いろんな有意味の流れが浮かび上がってくる。ああ、これが「編集」という行為の力なのだな、と。

会場の共立女子大が神保町にあるので(何と羨ましい立地!)、昼休みに古本屋をまわり「建築材料の歴史」を発見。一目見て、技術史的視点からの西洋建築史の参考資料になると感じたが、6,000円という価格に躊躇した。しかし近所のインターネットで調べると、ネット上ではどこでも売ってないことがわかり、購入することに。まあ便利な世の中というか何というか。

懇親会に出席した後、最終の新幹線で京都へ。

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ポルトワイン

萌えあがる鴨川の緑

やっと、追いつきました。

2009/5/18〜5/24

5/18(月)
朝からT邸中間検査。少々緊張はしたが、問題なく終了。
事務所に戻って別件の風致関係の図面作成。

5/19(火)
現場がだいぶ進んできたので、まだ書いてなかった細かい部分の納まり図とすでにある図面の修正を10枚ほど。晩、左官関係の納まりを相談するため、久住氏が事務所にやってくる。手みやげにポルト・ワインと各種のパン(北山東大路のパン屋とのこと。店の名前は忘れた)を持ってきてくれた。

どうも神楽岡の面々の間では、最近パンが流行ってるらしい。チーズカレーパン、ハムカツパン(?)がうまかった。ソースがいい。
ポルト・ワインは度数が20%あり飲み応えがあるものの、だーいぶ甘めのため、炭酸水で割ってレモンを絞ると丁度いい。

5/22(金)
T邸。開口部の形が見えてきて、だいぶ内部空間らしくなってきた。

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2001年素晴らしき哉

2009/5/11〜5/17

今週の映画は2本。
2001年宇宙の旅』1968:
高校生の頃に原作を読んだ時はほとんど理解できなかったが、今回は少しわかったかな?映画の場合ストーリーはほとんど重要でなく、作者・監督の「宇宙観・人類観」を表現した映像なのだととりあえず理解。68年という時代を意識すると、信じがたい程の映像美(CGなしでどうやって作ったのだ?)。宇宙空間のシーンは終始無音というのが緊迫感を生んでいた(真空なんだから)。

素晴らしき哉、人生!』1946:
いやー映画って・・・。嫁さん素晴らしすぎ。主人公は建築家を目指してたのに、諸般の事情でローン会社(兼ハウスメーカー?)の経営者になるわけだが、建築家になってたら多分このストーリーは成り立たなかった。と思うと、やや複雑な気持ちにならないこともない。

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上棟式・共食

T邸棟上げ完了時

もうすぐで今の日付に追いつけそうです。

2009/5/11〜5/17

5/11(月)
朝からT邸現場監理。夕方から上棟式を開催。



大工さん総出で紅白幕と祭壇を設営。
屋根を貼る前の2階でやったので、開放的で気持ちのよい上棟式でした。


オカメ地鎮式時の卒塔婆とお酒(うちも含め各業者から1升瓶×10本=1斗の日本酒!)が並ぶ祭壇に、二礼二拍一礼する工務店の高橋社長。さまになってますな。

1斗の日本酒を眺めつつ、最近話題のアルコール0%ビールで宴会。皆さん車ですからね、仕方ないですね。私は自転車だったんですけどね。
こういう儀式事、最近はどんどん簡略化される傾向があるようだけど、やはりお互いの顔を見ながら食事を共にするということには特別な意味がある。

「食事を共にする」=「共食(○きょうしょく。×ともぐい)」行為は、生命を維持する資源を共有・分配するわけだから、一般に共同体意識の形成の重要なきっかけとなる。一番身近な共食集団は家族であり、食卓を共にしない家族は危ういと言われる。インドではカーストが異なる人とは食事を共にしない(あくまで「原則」ですが)。共同体内の裏切り者の存在を指摘する「最後の晩餐」は共食の風景である。そう考えてきて今思いつきましたが、日本の居酒屋というのは、共食による共同体意識確認という目的に特化された場ですね。(cf. 石毛直道「人間は共食をする動物である」というテーゼについて

例によって飛躍しましたが、さて上棟式の場合、施主を含む皆でこの家を作ってる、という気持ちが共有されることが重要なのだと思います。あなた金を出す人・わたし作る人、ではダメなのです。


5/12(火)〜16(土)
ヴァーラーナシーVaranasi表記論文の査読が帰ってきたので、修正して再提出。

T邸の中間検査用資料作成。中間検査申込み。6万円。高すぎだろう。

現場にいって屋根に上がったり(結構怖い→)、サッシ廻りの納まり打合せ、中間検査の事前チェック、別件の図面作成などなど。

5/17(日)
夕方まで別件の仕事をやった後、来京していた父親(孫が生まれてからさして用もないのに京都へやってくる)とともに綾小路高倉の「味どころ・しん」へ。やや高めであるが魚(特に刺身)がうまい。「カワハギの薄造り w/肝」なんて久々。

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幸福の黄色い

今週の映画は久々に邦画で『幸福の黄色いハンカチ』。

単純なストーリーに必要にして十分に緻密なディテール。いやー山田洋次はすごい、倍賞千恵子かわいい。この映画、あらすじもラストシーンも有名らしいが、ほとんど知らないままに見たので大層よかった。旅もそうだけど、予備知識は無くてすむなら無いほうがいい。
(ところが、DVDパッケージにはそのラストシーンがどーんと全面印刷されていた。後になって気付いたからよかったけど。いくら有名シーンとはいえあまりに無神経でない?)

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建て方

2009/5/4〜5/10

5/8(金)
はっきりしない天気の中、朝からT邸の建て方工事が行われる。工程表によると今日はちゃんと大安らしい。
建て方は嬉しいので写真をたくさん。


1階の柱が立っている状態(9:30)



胴差を組み立てているところ(11:30)


2階の床組が大体できあがり(12:30)


建入れ(柱が垂直に建ってるかどうかの確認・調整)作業中(13:30)


2階床の構造用合板24mmをばんばん貼る(14:30)


遅い昼食休憩の後、2階外壁の組み立て。棟を支える柱は5寸角×7.5m。立派(16:00)


まさに「棟」を上げているとこ。前の道が狭く電線が張り巡らされてる中、クレーン車が超絶技巧で材を運んでいた。


ほぼ完了。建物の骨格ができあがり。大工さんお疲れ様でした(18:00)


帰りに「ホホエミhohoemi」でパンを買って帰る。

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ホイアンの町家 House:HoiAn, Vietnam, 1996

ホイアンの町家 House:HoiAn, Vietnam, 1996

古い街並みが残る町として知られるベトナムのホイアン HoiAn(リンク先、住居の説明がやけに充実しています)。


こちらの資料によれば、昭和女子大学を中心とする日本の調査チームがホイアン調査をはじめたのが1992年頃、ユネスコ世界遺産に登録されたのが1999年だから、僕が訪れた96年はちょうどその間にあたることになる。
すでに観光地としてよく知られていたものの、下の街並み写真を見てわかるように、まだ店もゲストハウスも人も少なく、のんびり静かに過ごすことができた。

バックパッカーなどしていると、ついつい居心地がよくて(予定を変更して)1〜2週間も滞在してしまうような町がある。もちろんその時の季節・天候・運(出会った人とか)にも大きく左右されるんだけど、そんな町はいくつかの要素を共通して備えている。

まず、人がいいこと、食事がいい(少なくとも悪くない)こと、そこそこ快適でリーズナブルな宿があること(後ろが山で前が酒屋とか)、そして、街並みや風景がいいことが決定的(特にする事がなければ、町をぶらつくしかないのだから)。格別な観光スポットは不要だ。
ホイアンはそんな居心地のよい町だった。
これまでに訪れた中では他に、大理、麗江(中国)、カンチャナブリー(タイ)、ヴィガン(フィリピン)、プシュカル(インド)、イスタンブール、ベルガマ(トルコ)、チェスキークルムロフ(チェコ)、フィレンツェ(イタリア)、バルセロナ(スペイン)等も居心地がよかったなぁ。

当時のホイアンでは、公開してる家屋は少なく、お店になってるのをいくつか覗いて撮らせてもらったのが、冒頭の写真。京都の町家や中国の四合院にも似ているようであるが、奥の深い陰影ある空間が木造ゆえの様々な開口部でつながっていく感じは、両者には見られない印象的なもの。
下は地元の人向けのカフェにて。飲んでるのは当然、アルミフィルターのベトナムコーヒー

Tags: | MEMO 雑記・ブログ , PICTUREs 旅と建築 | 09.05.18 | (0)

GW映画強化週間

2009/4/27〜5/3

今週はGWということで仕事少なめ、映画多めとした。
十戒』、『アマデウス』、『テルマ&ルイーズ』、『ピクニック
ラインナップは何の共通性もないですが。

十戒』1956:
「信じる者は救われる」という耳慣れたフレーズの意味がよくわかる映画(=信じない者は救われない)。モーゼは一神教の創始者という意味でキリスト以上のスーパー聖人であるが、「ベン=ハー」のキリストに比べるとだいぶ人間らしく描かれている。とはいえ、真の出自が判明したときに、王子から奴隷への転換をほとんど迷い無く受け入れてしまうところは不可解であった。日本とは異なるアメリカの民族・人種感覚に基づくものだろうか?
「蒼天航路」が下敷きとしたであろうシーンにいくつか気がついた。出エジプトの群衆大移動シーンとモーゼの評価を天秤で測るシーン。

アマデウス』1984:
天才って身近にいると嫌ですよね。映画としてはとても楽しめた。

テルマ&ルイーズ』1991:
二人の女性主人公がどんどん魅力的になっていくロードムービー。女性が主人公の映画ではこれまででベスト。ラストシーンの印象深さは他に類を見ないのではないか。
一昨年から個人的に大注目のマンガ「羣青(ぐんじょう)」は、全体トーンが大きく異なるものの、ベースはこの映画かと思う。このマンガも激しく熱くておススメです(女同士で歯の砕けるようなキスをする)。

ピクニック』1956:
ストーリーは今や陳腐化した定型ラブだが、実はそれを種にアメリカ片田舎の閉鎖的社会像を描いた映画。ラブものと思ってみると恐ろしくつまらない。むしろ、暗黙のルール・価値観が支配する小さな共同体(この場合は田舎町だが、現代でいえば学校や会社組織など)への異物混入の物語、として見た方がまだ楽しめる。
建築もそうだけど、「作品」というか文化的産物は、かならずそれが作られた時代の社会構造を背負っている。だから「作品」から時代や社会を読み取る楽しみがある一方で、それが分からないと作品意図を読み違えてしまう難しさがある、といった当たり前のことを再認識させられた。

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内と外のスケール感

2009/4/27〜5/3

5/1(金)
午前からT邸現場監理。先週末にできた基礎立ち上がりに土台を伏せる作業が進行中。

いつも不思議に思うのは、建物って、基礎しかない段階が一番狭く感じることである。
さんざん寸法を検討してプランを作ってるのに、この段階で中を歩くと、え、玄関こんな狭くて大丈夫?、寝室にベッド入れたら歩けないのでは?という不安さえ感じてしまう。

ところが建て方が始まって柱梁が組み上がってくると、ぐんと広く感じられるのだ。
さらに、天井が貼られ壁が仕上がってくると、物理的には狭くなってるのに、感覚としてはどんどん広くなっていく。

たぶんこれは空間の「内と外」の認識の成立、および、「内と外」では空間認識のスケール感が異なる、といった問題と関連してるのだろう。
基礎だけで壁がない状態では、視線や意識がそのまま周囲に抜けていくから、道路や隣の駐車場といった「外部」の一部として家をとらえてしまい、外部のスケール感で測る分狭く感じると思われる。壁や屋根、仕上げができるに従い「内部」が成立し、空間を感じるスケール感も、内部のそれに移行していくに違いない。

という推測をめぐらしたが、果たしてこれは一般に共通する感覚なのだろうか?。今回の工事過程ではそれを意識しながら見てみよう。

昼食後、リバーバンクにて2時間ほど西洋建築史の授業構想を練る。この店、眺めがよく静かで考え事するのに程よい。最近のお気に入り。

夕方から、高橋工務店にて内外の左官をやってもらう久住鴻輔氏と工程調整の打合せ。
帰りに現場によったら、もう1階の床が完成していた。仕事が速いなあ。

5/3(日)
T邸クライアント夫妻と現場を見てもらいながら打合せ。表札やテレビアンテナ、セキュリティ関係についてコマゴマとした事柄を一つずつ決めていく。

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コンペ・報告書など

鞆の浦はまだ書きたいことがあるんだけど、ちょっと休憩。
上の写真は、鞆の浦名物の保命酒(ほうめいしゅ)4銘柄。16種類の薬種を使ったリキュール(ベースは焼酎かな?)で、かなり甘いけれど、食前酒として氷と一緒にショットグラスで飲むとなかなか。燗にしてもいけそうだ。鞆の浦の食堂「田渕屋」で各種銘柄を試すことができる(ここはお勧め。土間と小上がりの関係がとても心地よい)。

2009/4/27〜5/3

4/27(月)〜29(水)
鞆の浦・広島から帰って、30日必着のコンペにむけた作業。
小規模なコンペで実は建築分野でもないのだけど、かねてから温めていたテーマに合致するので、作品をつくるいい機会と考えて乗っかることにしたのだ。

大まかな下書きは帰省前にできあがってたので、久々に製図板を設置して本番用の下書きとペン入れ作業にまる3日。肩はこるが楽しくはあり、描き込みきれない部分を残しつつも、タイムアウトで発送。未練は残るがこれで選外ならば、描き込みきっててもきっとダメだろう、と開き直る。

4/30(木)
3日間ためてたメール対応や、昨年度までもらってた研究費の報告書作成。そこそこに実績をあげることはできたものの、まだ眠ってるデータがあるのがもったいない。黄表紙(建築学会の論文誌)論文2本分くらいの材料はあるんだけどな。調査資料は生ものだから、腐ってしまう前に何とかしないと。

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鞆の浦2(雁木とガート)

鞆の浦・常夜燈

2009/4/20〜4/26

4/23(木)〜25(土)
今回は港の話。( >> 前回
鞆の浦には江戸期の港湾施設セットがかなりいい状態で残っていて、この歴史的遺産の保存というのが、「架橋計画」反対の根拠の一つとなっている(参考文献)。
その港湾施設セットというのは、常夜燈(灯台)、雁木(護岸)、波止(防波堤)、焚場(ドック)、船番所(監視施設)の5点なんだけど、この中で個人的に目が釘付けになってしまったのが、階段状の護岸、「雁木(がんぎ)」。


インドに行ったことがある人は気付くと思うんだけど、これ、インドの水辺に必ずある階段状施設、「ガートghat」とまったく同じ構造なんですね。
いやー日本にもこういう施設があるとは知らなかった。

(余談ですが、「ガート」は階段形状が一般的ではあるが、舗装した斜面や未舗装の土手などもガートと呼ばれる。つまり平地部と水面を結ぶ斜面状のものの総称なのだと思う。対して「雁木」は、「雁」というジグザグ形状を示す字が使われてるように、階段状のものを限定的に指している。)

ヴァーラーナシーVaranasiのガート


雁木もガートも、主な機能として「護岸」と「水面へのアプローチ」の二つを兼ねている。最大のポイントは階段状であること。この形のおかげで、水位の変化に影響されず、常に水面へアクセスすることができる。また、斜面でなく階段であるがゆえ、そこに座ったり物を置いたりすることがしやすく、「場所」としてのポテンシャルが生まれる。こういった階段状施設のよさのもう一つは、水面に対して、「線」(浮き桟橋のような)ではなく、「面」で接してることだろう。これによって、水辺との関係が飛躍的に多様化しているはずだ。

満潮時と干潮時の雁木


雁木とガートは、物理的形状はまったく同じ、と断言してよい。

では、異なる点に注目すると、設置されている場所の差が一つ。
鞆の浦を含む日本の雁木は、資料で見る限り、海岸、それも内海(特に瀬戸内海)が中心だ。対してインドでは、河や湖・池が中心であり、海の階段状ガートは今のところ見たことがない。
何故かと考えるに、まず雁木もガートも、水位の変動する水辺のための装置だ。
海は満ち引きによる水位変化がある。ただし外洋に面した海は波がきつすぎて、こんな密に水面に接するのは危険すぎるだろう。だから海岸に作られる場合は、瀬戸内のような波の静かな海の、さらに湾状の部分に限られているのだと想像する(だから、インドでも湾状のところには海岸ガートがあるかもしれない)。
河にも大雨や渇水による水位変動はある。インドの河の水位変動はモンスーンに応じた季節的なもので、その水位の差は大きい(数m変動することもある)ものの、変化はゆるやかである。ガートが非常に適している。
それに対し日本の場合は、台風や長雨による突発的で破壊的な増水が多い。「河原者」という言葉もあるように、日本では河辺というのは親しみやすい場所ではなかったのだろう。

もう一つ、使われ方というか認識のされ方が違う。
雁木は、船へのアクセスや荷物の積み卸しなど、港湾施設として見られることが多い。対してインドのガートは、もちろん河では船着き場でもあったんだけど、主に休憩・水浴・洗濯等に供する親水施設として見られている。
(雁木の場合、海だから、生活の中では使いづらいというのはあろう。インドの場合、特に水を神聖視する伝統があるため、それが水面に対する親密さに表れているのだろう。)

鞆の浦について思うのは、沖の波止のおかげか波がほとんど無く、類まれに海がやさしく近いこと。
冒頭の写真、右にある家が海の中にせり出して建っているけど、日本の海でこんなことって普通ありえないでしょう? 日本海だったらちょっと天気が荒れれば、高波が瓦屋根の上からかかりますよ。
そんな近しい海があるわけだから、鞆の浦の雁木は、港湾施設の役割を終えても十分、インドのガートのような親水施設として活躍できそうに思います。だから、雁木に浮き桟橋をかけて使うなんてことはやめましょう。

実は鞆の浦の海岸を見たとき、始めに思い浮かんだのは、インドのラージャスターン州にあるプシュカルPushkarという湖の町である。
さほど大きくない湖の岸が全部ガートになっていて、その背後を町並が包んでいる。湖を囲んだ小さな町。町のどこからでも湖を眺められて、ガートに座ってお茶を飲んで本を読んで昼寝して、観光的な目玉は何もないのに、それだけで何日何日もくつろいでしまうような静かな町だった。

この海と雁木・背後の街を活かせば、そんな滞在型の町に、鞆の浦もなれると思うんだけどなぁ。

Tags: | MEMO 雑記・ブログ , SELECTED 選り抜き | 09.05.05 | (0)

鞆の浦1(対潮楼・架橋問題)

福禅寺・対潮楼、鞆町広島(2008)

2009/4/20〜4/26

4/23(木)〜25(土)
3日ほど休日をとって、連れ合いの実家の広島にチビを連れて行く。
道中、鞆の浦(とものうら)に一泊。古い街並みの残る町として建築の世界では昔から知られているが、最近は「ポニョ」や「架橋問題」(実は再燃)で、世間的にも注目が集まっているようだ。

上の写真は対潮楼
瀬戸内の絶景を切り取る豪快な開口部が魅力の建築。奈良の慈光院円通寺、栗林公園の掬月亭などに似ているけど、こちらは腰壁がついてるのと、庭が無い(つまり近景が無い)ので、額縁っぽさがより強い。景観そのものの迫力も群を抜いている。お見事(窓に近づくと、いろいろなものが見えちゃうんだけど)。
一方、この眺めに至るまでのアプローチには作為的演出がほとんどなく、ごく普通にこの窓にたどりついてしまう。その意味では、あまり「建築的」ではない。でもそのおかげか、部屋に座って落ち着いてると、円通寺のように「さあこの庭と対面しなさい。すごいでしょ」という(やや押しつけがましい)感じを受けない。絶景を、気楽に、眺めることができるのがとてもいい。

こういうガバーッと開いた開口部って、実は日本建築では全然珍しくない。壁一面を障子で開放できる建物は、もうたくさんある。軒先と縁側、柱で切り取られる、というピクチャレスクな構図も、日本の建築としてちゃんと作ってれば、当然そうなる(その当然が今ではなかなかできないんだけど)。
じゃあ、そんな中で上にあげたような建築がなぜ別格なのかと考えると、やっぱり、その開口部の外にある、庭を含む「景」の力が決定的なんだと思う(もちろん「景」と建物との関係のとり方も重要なんだけど。上に挙げたのは、そこらへん(開放の度合いとかアプローチ)が面白いのだ)。
日本の建築・空間にとって、外部との関係がいかに大切かということをあらためて考えてしまいました。

参考:奈良の慈光院(2005年)

以下ちょっと飛躍するんだけど、そういう観点からも、鞆の浦の湾を横断する「架橋」というのは、やはりやめた方がいいんじゃないかと。常夜灯のある観光特異点からの眺めだけでなく、鞆の浦全体からの眺めに影響を及ぼすわけで。京都なんかで、立派な借景のある庭が、マンションやペンシルビル、高架道路の建設でいかにスポイルされてきたことか。
政策的に言っても、60〜70年代にさんざ海岸の埋立や架橋をやって、日本各地にあった鞆の浦のような風景を無くしてきたのに。だからこそ今、鞆の浦の存在価値が相対的に高まっているというのに。
景観でメシは食えんという向きももちろんありましょう。単なる「観光地化」では、あの町の規模ではキツイでしょう(たぶんあまり宿泊しないから)。橋が架かる事によるメリットも(交通事情改善の他に)いろいろあることでしょう。でも他の土地にない極めて恵まれた「資源」を、使い道がまだ見出せないからといって、うっちゃってしまうのは、非常にもったいないように思うんだけどなあ。

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木材・基礎立上り

2009/4/20〜4/26

4/20(月)、21(火)
みっちり描き込んだドローイングを久々にやろうと思いたち、こもりきりで、とあるコンペ応募作のスタディを重ねる。まったく一人で架空の作品を構想するのは久しぶりなので新鮮で楽しい。

4/22日(水)
夕方、高橋工務店さんの工場(こうば)へ行き、プレカット工場(こうじょう)より届いたT邸の部材をチェック。


今回は、クライアントが木の「節」をかなり気にしていたので、その点が心配だったけど、問題ないレベルで安心した。しかし節の他にも、材毎の色合いの差や結束の跡、現場での汚れの防止など、木造で構造体をあらわしにする場合はいろいろな気を使わないといけないのでたいへん。
斜め部分の取り合いは、手刻みでの加工が進んでいる。
現場では基礎立ち上がりの型枠が設置された。


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ベン=ハーFollow me

2009/4/13〜4/19

今週の映画。
恥ずかしながらいまさら『ベン・ハー』。
まさに大作。まさに名作。問答無用・真向勝負のド迫力にやられます。戦車競技場が全部セットだとは(ジョジョ第2部の戦車シーンはここがルーツだったんだと気付いた)。現代の名作映画もいいけれど、これと比べると、まるでパルテノン神殿とサヴォア邸のようなスケールの違いを感じます。
もう一つ『Follow me』。切れ味のいいラブコメ。ラブものとしては、ひょっとしていままで見た中で一番好みかも。

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聴竹居:京都、2009

許可を得て室内も撮影させてもらったけど、残念ながら室内写真は掲載できないので外観のみ。スカルパを彷彿させる開口部。

2009/4/15(水)

大山崎の聴竹居へ。
建築の教科書には必ずでてくるし、雑誌や書籍にも繰り返し登場する近代住宅の名作。しかし現存するにもかかわらず、一般には非公開の状態が続いていた。
けれど昨年から、住宅の管理がこちらの組織に移ったことにより、事前申込みをすれば見学できることをつい最近知り、早速行ってきた。淡い新緑のきれいな、いいタイミングでした。

平日の午前のためか見学者は3人しかおらず、たいへんゆっくりと静かに見学することができたのはラッキーだった。ボランティアスタッフの方にも非常に丁寧な解説をしていただき感謝。

聴竹居についてはいろんなところで解説されてるけど、とりあえずそれらとの重複は気にせず個人的印象をメモ(室内写真無しでわかりにくいですが)。


・居間を介した諸室のつながり
プランの肝は、変形の居間の周囲に縁側・読書室・客室・食事室・調理室などの主要な部屋がとりついた部分。一種の求心的な構成で、モダンのようにも、和風住宅の室構成のようにも見える。
ただし居間が中心としての存在感を示すのでなく、あくまで諸室の媒介空間になっているのがポイント。各室からは必ず居間をはさんで他の部屋へ、さらには外部へと視線が抜けるようになっていて、実にのびやか。

・光の感じ
諸室を結ぶ動線でもある居間は、直接外部に面する窓をもたないので、やや暗い。対して周囲の諸室は、大きな開口部をもち、部屋毎に光のニュアンスは違うが、一言でいえば、明るい。その差が、変化と奥行きのある室内シーンを作りだしているように思える。
寝室と玄関に対しては、1クッション空間をはさんでいるところもニクい。

・読書室
ほどよい部屋のスケールと棚のデザイン。父親と子供たち共有の勉強部屋か。縁側に開いた窓。外ではなくて室内に開いた窓というのは、住宅内に不思議な親密感と距離感を生んでいる。現代の住宅でももっと使われていい手法に思う。

・客室床の間の照明
客室のメイン照明と床の間の間接照明の一台二役。こういう工夫は楽しい。
(写真がないと意味わからないな)

あとは、とにかく細部に至るまでデザイン密度と施工精度が高いことに驚く。
80年経ってるにもかかわらず、軸組や建具廻りの歪みがどこにも見られない。案内の方によれば、資産家であった藤井厚二は、敷地内に住み込みの宮大工をかかえてこの家をつくったのだとか。

有名な環境的な配慮については、残念ながら住んでみないことにはその効果のほどはわからない。通風の仕掛けがあちこちにあって面白かったけど、この丘の上の敷地と緑があれば、夏は部屋の窓だけで十分な涼気を確保できたのではという気もする。町家住まいの経験者としては、どちらかというと冬の寒さ対策に興味がある。

よく言われるライトとの関連については、なるほど、流れるような空間構成とか、照明器具のデザインとか、開口部の納まりとか、軸組・鴨居・敷居・回縁等を効果的に使った壁の平面的構成とか、あちこちに通じるものがある。
ただ聴竹居(1928年)は、全体としてあくまで和風・数寄屋の矜持を保っている感があり、例えば同時代の、同じようにモダンと和風の融合を狙ったライトの山邑邸(1924年)のインテリアに比べると、ずっと繊細で上品である。
(この後、近くの大山崎山荘にも行ったけど、聴竹居と比べるとあまりに大味で粗野に見えてびっくりした)。

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花見茶・愛情物語

2009/4/6〜4/12

4/12(日)
久住氏に声をかけられて黒谷光明寺での花見茶席へ。
僕の頭には「お茶」について、何故か、いつのころからか、『格式偏重の前近代的権威主義的世界』とかいう負のイメージがこびりついていて、ある時期には、それを習うことは(極端に言えば)『非京都人の京都趣味への屈辱的迎合』に他ならない、とまで思っていた。まったく研究者や設計者としてあるまじき偏見である。

最近はさすがにそうまで思わないが、やっぱり何となく避けている(西洋建築史への態度と似てるかも)。
でもこの日のように、屋外の桜の下でゆっくりとお茶をすするのは、無条件に気持ちのよいものだ。小さな緋毛氈を共有するのもまたよし。


今週の映画は『愛情物語』。ベタベタにアメリカンな、でも清々しいラブ映画。すばらしい。

Tags: | MEMO 雑記・ブログ | 09.05.02 | (0)

うちのビル・ヴァーラーナシー修論

御幸町通で通りがかりに見かけた「猫窓」。自転車で前を走っていてびっくりした。以前ショーウィンドウだったものを改造したと思われる。猫はガラスに守られているので、近くに寄ってもまったく警戒する素振りがない。

2009/4/6〜4/12

4/8(水)
先月から隣の部屋が空室になっていたので、京都に部屋を探している友人に紹介したところ、探していた部屋の条件とバッチリとのことで、本日夫妻で見学に来訪。
隣の部屋は三角形の変形プランで、前部屋がドドーンと鴨川に面している。うちのビルは1960年代の建設ながら、開口部のオープンさは最近のデザイナーズマンションでもなかなかありえない程に大胆だ。

五条通からも目立つため、一部の人には結構気にされているみたい。ただ街の不動産屋には情報が出ていないので、入居希望者はビル外壁の「空室」看板を要チェックである。

4/11(土)
夕方、2007年にヴァーラーナシーの調査を一緒にやった滋賀県大の中濱君が来訪。
その時の調査を基に書き上げた修論(とビール)をもってきてくれた。
彼の研究は、ヒンドゥーの聖地たるヴァーラーナシーに住むムスリム(イスラム教徒)の居住地の空間構成、というもの。僕の研究で目が届いていなかったヴァーラーナシーのイスラーム関係の資料を丁寧にまとめてくれているので、たいへんありがたい。是非学会論文として世の目に触れる形にまとめたいものだ。

Tags: | MEMO 雑記・ブログ | 09.05.01 | (0)

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2009年05月

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