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聴竹居:京都、2009: 究建築研究室 Q-Labo.|https://q-labo.info/memo/000066.php
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聴竹居:京都、2009

許可を得て室内も撮影させてもらったけど、残念ながら室内写真は掲載できないので外観のみ。スカルパを彷彿させる開口部。

2009/4/15(水)

大山崎の聴竹居へ。
建築の教科書には必ずでてくるし、雑誌や書籍にも繰り返し登場する近代住宅の名作。しかし現存するにもかかわらず、一般には非公開の状態が続いていた。
けれど昨年から、住宅の管理がこちらの組織に移ったことにより、事前申込みをすれば見学できることをつい最近知り、早速行ってきた。淡い新緑のきれいな、いいタイミングでした。

平日の午前のためか見学者は3人しかおらず、たいへんゆっくりと静かに見学することができたのはラッキーだった。ボランティアスタッフの方にも非常に丁寧な解説をしていただき感謝。

聴竹居についてはいろんなところで解説されてるけど、とりあえずそれらとの重複は気にせず個人的印象をメモ(室内写真無しでわかりにくいですが)。


・居間を介した諸室のつながり
プランの肝は、変形の居間の周囲に縁側・読書室・客室・食事室・調理室などの主要な部屋がとりついた部分。一種の求心的な構成で、モダンのようにも、和風住宅の室構成のようにも見える。
ただし居間が中心としての存在感を示すのでなく、あくまで諸室の媒介空間になっているのがポイント。各室からは必ず居間をはさんで他の部屋へ、さらには外部へと視線が抜けるようになっていて、実にのびやか。

・光の感じ
諸室を結ぶ動線でもある居間は、直接外部に面する窓をもたないので、やや暗い。対して周囲の諸室は、大きな開口部をもち、部屋毎に光のニュアンスは違うが、一言でいえば、明るい。その差が、変化と奥行きのある室内シーンを作りだしているように思える。
寝室と玄関に対しては、1クッション空間をはさんでいるところもニクい。

・読書室
ほどよい部屋のスケールと棚のデザイン。父親と子供たち共有の勉強部屋か。縁側に開いた窓。外ではなくて室内に開いた窓というのは、住宅内に不思議な親密感と距離感を生んでいる。現代の住宅でももっと使われていい手法に思う。

・客室床の間の照明
客室のメイン照明と床の間の間接照明の一台二役。こういう工夫は楽しい。
(写真がないと意味わからないな)

あとは、とにかく細部に至るまでデザイン密度と施工精度が高いことに驚く。
80年経ってるにもかかわらず、軸組や建具廻りの歪みがどこにも見られない。案内の方によれば、資産家であった藤井厚二は、敷地内に住み込みの宮大工をかかえてこの家をつくったのだとか。

有名な環境的な配慮については、残念ながら住んでみないことにはその効果のほどはわからない。通風の仕掛けがあちこちにあって面白かったけど、この丘の上の敷地と緑があれば、夏は部屋の窓だけで十分な涼気を確保できたのではという気もする。町家住まいの経験者としては、どちらかというと冬の寒さ対策に興味がある。

よく言われるライトとの関連については、なるほど、流れるような空間構成とか、照明器具のデザインとか、開口部の納まりとか、軸組・鴨居・敷居・回縁等を効果的に使った壁の平面的構成とか、あちこちに通じるものがある。
ただ聴竹居(1928年)は、全体としてあくまで和風・数寄屋の矜持を保っている感があり、例えば同時代の、同じようにモダンと和風の融合を狙ったライトの山邑邸(1924年)のインテリアに比べると、ずっと繊細で上品である。
(この後、近くの大山崎山荘にも行ったけど、聴竹居と比べるとあまりに大味で粗野に見えてびっくりした)。

Tags: | MEMO 雑記・ブログ , PICTUREs 旅と建築 | 09.05.02 | (0)

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