【住み方発見!! Home Life Diaries in Japan】展 会場/展示構成
2024年12月2日から15日にわたる2週間、これまでの住経験研究のアーカイブス・発信の場として【住み方発見!! Home Life Diaries in Japan】と題した展覧会を行った。会場は、安藤忠雄氏が設計した旧住宅「ギャラリー日本橋の家」である。住経験研究を共同する、大阪工業大学水島あかね先生、同山本麻子先生、近畿大学池尻隆史先生及び各研究室所属学生と、加子母木匠塾OBOGを中心とする「モクテキ工藝社」と協働し、50名以上が開催に関わる展覧会となった。
本展覧会では、これまでの住経験インタビューによって記録された、約500人の学生による計2000以上の住まいの中からユニークなものをおよそ100点選出し、様々な切り口からその内容を発信した。
建築を専門とする人をはじめ、そうでない人とも深く関係を持ち、それゆえの多様な見方・面白さが認められる住経験を発信することから、多くの人に開かれそして見る人が自身と接続して捉えられる展覧会にすることが軸となった。来場されたさまざまな人が他者の多様な住まいの姿を知り、自身の住まいの記憶を思い起こすきっかけともなるように、いくつもの展示空間・構成の模索を経て、計画の決定、開催に至った。
(執筆/井上青葉)
【住み方発見!! Home Life Diaries in Japan】展の概要
京大建築式の記事「建築分野の研究を、建築を介して発信する。:『住み方発見!! Home Life Diaries in Japan』展と旧住宅に映る住経験
名称:「住み方発見!! Home Life Diaries in Japan」展
所在地:大阪府大阪市
用途:展覧会会場/展示構成
設計期間:2024年8月〜2024年12月、設営期間:2024年12月
監修:国際住経験会議実行委員会
柳沢究(代表・京都大学)/池尻隆史(近畿大学)/山本麻子(アルファヴィル・大阪工業大学)/水島あかね(大阪工業大学)/野村理恵(北海道大学)/野田倫生(京都大学)
展示什器設計製作:モクテキ工藝社[小池駿輝/上田瑛藍/本田凌也/福本拓真/馬木莉彩/野田侑里/村上凌/伊勢玉奈/八木一歩/赤路朋哉]
展示構成・制作:京都大学柳沢研究室[井上青葉/銭佳/孫文倩/原田佳苗/趙士徳]
中庭インスタレーション:大阪工業大学山本研究室[井口遥日/池田創把/大釜慶人/岡田直輝/黒見奏江/小畠優陽/初村優妃/原田純江/松園梨那/宮田蓮/渡邉蒼良/三宅帆乃花/吉村正太郎]
来場者参加コーナー:近畿大学池尻研究室[渕上颯太/藤田采佳/志茂太晟]
会場協力:金森秀治郎(ギャラリー日本橋の家)
助成:ユニオン造形文化財団(令和6年度国際交流助成)
会場である「ギャラリー日本橋の家」は、少しずつ空間の異なる室が複雑に結ばれた建築である。本展覧会では、立体物でない図面と膨大な文字による二次元情報の展示物が並ぶため、より一層、会場の空間が活きる展示内容と構成を計画することが要点となった。同時に、「住経験」を初めて知る来場者が、多様な見方を提示する各展示を個別に捉えることで、全体像を把握しづらくなることへの危惧もあった。
そのため、4つのフロアからなる会場の空間をまとまりで分割し、各空間にどういった展示ができるのかを模索しながらも、それらが断片的に映ることなく、住経験研究としての一体感を持って受け入れられる構成となることにも重点が置かれ、空間・構成・内容を織り交ぜて計画が進められた。

全体計画 第2案の一部
展示方法や展示空間については、会場の打ち放しコンクリート壁にはこれまでの展覧会で使われたテープの跡が残り、壁の劣化につながっていることや、展示内容からして敷居の高くない、親しみのある空間にすることなどを踏まえて計画された。いくつかの試作と議論を経て、展示物はパネル化せず、クロスに印刷したものを上下に棒材を渡して張り、麻紐と木製クリップで吊る形式を採った。またモクテキ工藝社にも協力を仰ぎ、より自由度が高く印象的な展示空間を実現するため、一部展示での木製什器の設計、施工を中心として展示計画に参加してもらった。
打ち放しのコンクリートと展示を支える木・麻、そして展示物の白を基調とした展示空間は、住まいと生活を扱う「住経験」とかつて住宅であった「ギャラリー日本橋の家」の親和性も相まった、柔らかくまとまりのあるものに仕上がった。

<1F_旧店舗部分>
① 住経験研究の紹介
② 描かれた間取り図のアーカイブ
③ 住まいの遍歴
本展覧会で展示される住まいと生活の記述・図面が記録されるプロセス、そこから見えてくるものなど、土台となる住経験研究をはじめに紹介。その後、記録された膨大な住まいの姿を空間と合わせて体感する場、ある人の住まいと人生のフェーズの変遷が重ねて描かれた遍歴へと続いていく。実際に記録された住まいやその変遷を見ることは、誰かの生活や人生を垣間見るようなものでもあり、記録に映るものを来場者自身が感じ、想像しながら見て回る展示構成となっている。

<3F_中庭>
④ 「日本橋の家」の住み方
このギャラリーが住宅であったころ、居住者家族は中庭の手すりに紐を渡し、洗濯物を干していた——
日本橋の家での住み方が描かれた衣服が並ぶ光景には、「住経験」と「ギャラリー日本橋の家」が空間として結びつき、かつての住まいの姿が投影されている。
(計画・設営:大阪工業大学山本研究室)

<3,4F_旧寝室>
⑤ 「普通」の住まいのさまざまな生活
⑥ 他者とともにある住まい
⑦ ちょっと「変わった」住まいと住み方
2000以上の住まいの中でもとりわけユニークなものを選抜し、3つの見方に分けてそれぞれ1つの寝室に展示する。各室一面にはモクテキ工藝社設計・施工の什器が取り付けられ、それらのかたちや壁にかかった展示物からは、かつての住宅の面影が感じられる計画となっている。

<3F_旧書斎>
⑧ 来場者参加コーナー 「思い出の住居」の間取りを描く
あまり知ることのない他人の住まいを見ることをきっかけに、自身の住まいへの思いを巡らせることの延長として、来場者に自身の住まいの図面を描いてもらう場である。建築を専門としない人にとっては、見知った自宅を描くことも十分に難しいと思われるが、それもまた住経験理解の一歩となるだろう。
(計画・設営:近畿大学池尻研究室)

<2,3F_旧リビング・ダイニング>
⑨ 住経験インタビューの国際展開
国外での住経験インタビューの実施によって記録された住まいとその活動の様子を発信する。今後さらに実施範囲を拡大することが計画される中で、どのような記録がなされるのか期待が高まるものである。

| Projects プロジェクト , Desgin 建築設計 | 25.10.01


