空理庵
大阪市淀川区、施主の暮らす民家で営まれるカラオケスナック(昼は喫茶)。周囲には戸建住宅や中低層のマンションが並び、個人商店もちらほらと見られる。この家も以前はたばこ店を営業していたが、現在は店先の自販機による販売がほとんどになっていたため、使わなくなったスペースと台所を改修し、カラオケと軽食を楽しめる店舗にしたいとの依頼であった。カラオケは80代である施主の母の趣味でもあり、近くに住む友人たちと憩う場としての使用も想定された。
計画にあたっては、高齢者が心地よく過ごせる空間であることと、住宅街でのカラオケに耐えうる高い防音性が求められた。親しんだ居間のような、緊張感のない居心地の良さをめざし、内部仕上げには独特の柔らかな表情をもつタイルカーペットを採用。L字のカウンター席、ボックス席は開かれた厨房を向き、店主である施主との会話やカラオケを楽しみやすい構成となっている。
外壁やスチール製の玄関扉により防音性能を高めつつ、閉鎖的な空間にならないよう前面道路に対して開口を設けた。この開口はたばこ店で使われていた受け渡し口を転用したものである。造作棚やファサードにも旧店舗の要素がいくつか残されており、この家の新たな時間を共に歩んでいる。
名称:空理庵
所在地:大阪府大阪市
用途:飲食店(カラオケスナック)
構造・規模:木造在来工法・平屋建て(改修部)
改修部面積:20.26㎡
設計期間:2022年5月〜2023年1月、工事期間:2023年4月〜8月
施工:アールエスビルド株式会社
設計:京都大学柳沢研究室(野田倫生・川岸夕夏・清岡鈴・辻京佑)
設計協力:葛潔薇・孫文倩
監修:柳沢究
かつてたばこの在庫が入れられていたケース。
ボックス席のベンチは設計チームが制作。Shopbotにより木材の加工を行った。マッサージチェアが隣に並ぶ。
吸音効果も期待し、壁面の大部分と天井の一部はタイルカーペット仕上げとした。照明や見る角度によって表情を変える。
たばこ店の窓口を以前と概ね同じ位置に保存し開口を確保。防音のため、嵌め殺しのペアガラスへと変更している。
写真撮影:野田倫生
| Projects プロジェクト , Desgin 建築設計 | 24.05.17