(旧)柳沢研究室|名城大学理工学部建築学科
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有松の塀: (旧)柳沢研究室|名城大学理工学部建築学科|https://q-labo.info/meijo/020_project/000393.php
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有松の塀

名古屋市緑区、旧東海道沿いの有松の街の中にある大規模な町家の塀。もともと通りに面して建っていた古い鉄骨ガレージ(下図)を撤去し、有松の歴史的街並みに調和した新しい塀をつくりたいとの依頼にこたえてつくられました。

名称:有松の塀
所在地:名古屋市緑区
設計期間:2014年12月〜2015年2月、工事期間:2015年3月
設計:名城大学柳沢研究室(柳沢究・山本将太・及部友誉・加藤大誠・諏訪匠・長屋美咲・松田彩花)
施工:工作舎中村建築(中村武司・佐藤俊伸)+名城大学柳沢研究室(山本将太・岡田一輝・市村千尋・大野将弥・及部友誉・加藤大誠・川端一輝・諏訪匠・長屋美咲・松田彩花・渡辺愛理・今江将吾・遠藤結夏・保浦開・川嶌梓・児玉春香・河合栄拓・鈴木友之・鈴木結貴・髙間智子・竹内久美子・吉川千由希)
企画・監修:究建築研究室

高さや板の張り方・屋根は、隣接する明治時代の塀や昭和30年代の塀と調和するよう伝統的な板塀のデザインを踏襲しつつ、金属板一枚葺の屋根や三角の垂木板を用いて、シンプルで現代的な表情となるよう工夫しています。基礎の石積みは、庭から掘り起こされた昔の門柱の礎石や石垣の間知石・棒石など20数点を複雑に組み合せたものです。石積み+板という形式は有松の塀のスタイルの一つですが、そこにこの家のこれまでの歴史や生活を継承する意図を重ねています。

設計は名城大学柳沢研究室にて行い、施工も大工・中村武司氏の指揮のもと研究室の学生たち20人以上(延べ85人)が、ガレージの解体から穴掘り・石積み・木材加工・建て方・古色塗装に至るまで、全面的に作業に参加して行ないました。工事にあたっては名古屋市の「町並み保存事業補助金」による助成を受けました。

>> 施工の様子(柳沢研究室@Facebook)



※以上、撮影:笹倉洋平


建設前の様子


古いガレージの解体


基礎工事


石組み。かつての門柱の礎石を据えている


工場での刻み作業


古色仕上げ


建て方


竣工時の餅まき

構造・規模:木造、高さ/2.2m、長さ/11m(東西3.5m+南北6.5m)
主な仕上げ:
屋根/カラーガルバリウム鋼板一枚葺
壁/杉板t12+古色仕上げ(柿渋・松煙)
軸組/桧+古色仕上げ、基礎/石積み

有松での取り組みを、2015年7月31日(金)付の中日新聞(夕刊)に紹介していただきました。

有松の塀中日新聞掲載


町家保存 学生の手で
住民の負担 教育活用でカバー / 名古屋の商家を名城大生再生

名城大の学生たちが建てた塀を納得の表情で眺める服部安輝枝さん=名古屋市緑区有松で(中尾吟撮影)

 歴史的価値が高い古民家や商家を大学などが教育目的に活用し、維持管理に乗り出す取り組みが広がりを見せている。背景には、改修が必要な建物であっても莫大(ばくだい)な費用を個人で負担するのが難しかったり、住民の高齢化などで空き家になってしまったりする邸宅が増えている事情がある。(社会部・中尾吟)
 
 名古屋市緑区有松の旧東海道沿い。絞り染めの「有松絞」で発展した豪壮な商家が軒を連ねる町並みに、石積みの土台に古い質感を持たせた木で組んだ塀がある。
 
 塀を建てたのは、名城大(名古屋市天白区)建築学科の柳沢究(きわむ)准教授の研究室の学生たち。空き家となっている明治時代創建の愛知県指定文化財の町家の一角でもともとはトタン張りのガレージがあった。隣に立つ町家本体の景観を損ねていると感じた所有者の依頼を受け、景観に合った新しい塀を建てることにした。
 
 学生たちは、庭から掘り起こされた礎石などを活用して土台を造り、周囲の人家の塀と似た板組みの塀を設計。愛・地球博記念公園(愛知県長久手市)にある「サツキとメイの家」を手掛けた大工中村武司さんの指導を受け今年3月、20人以上で作業して仕上げた。
 
 今後は壁面や屋根に傷みがある町家本体の改修を検討しており、秋には町家を会場としたイベントを市などと連携して開く考え。町家を所有する服部安輝枝さん(47)は「改修には億単位の費用がかかり、個人で負担するのは難しかった。今回の塀の建設で、歴史ある町並みを守る一歩が踏み出せたことは大きく、世界一の塀だと思う」と喜ぶ。
 
 町家などの伝統建築の維持管理は全国的な問題だ。歴史的町並みを持つ全国の90市町村でつくる「全国伝統的建造物群保存地区協議会」(伝建協)は、伝統建築の住民が高齢のため死去したり、持ち主が分からなくなったりして空き家が増えているのを重要課題とし、担当者は「毎年の総会で、各地から深刻な状況が報告される」と話す。
 
 そうした現状の打破に一役買おうと、町家が多く残る京都を中心に近年、町家の改修など維持管理に関わる大学が現れている。龍谷大(京都市伏見区)は2013年5月から、江戸時代の町家を学生の会議などで使えるキャンパスとして活用。京都建築専門学校(京都市上京区)も、授業の一環として町家の改修を行っている。
 
 伝統建築を生かした観光スポット「黒壁スクエア」がある滋賀県長浜市でも、地元の長浜バイオ大が12年4月から町家を「町家キャンパス」として借り受け、学生が開く科学教室の会場などに活用している。
 
 柳沢准教授は「個人の負担だけで文化財を維持管理していくのは難しい時代。大学や行政、企業などが連携して守り、人々に町並みの魅力に気付いてもらえる取り組みを進めていくことが必要だ」と話す。

(2015年7月31日・中日新聞(CHUNICHI Web)より転載)

| プロジェクト , 2014年度 | 15.07.02