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京都絶対領域

京都府建築士会の発行する雑誌『京都だより』に2011年7月より隔月連載中の記事です。各項目をクリックするとPDFが表示されます。

【京都絶対領域】

『京都らしい』建築を分かり易く構成する要素、庇・格子・坪庭などなど…。
これらの要素を建築に採用することで、安易に「京都らしさ」を獲得した気になってはいないだろうか。あるいは逆に必要以上に忌避してはいないだろうか。
そもそも格子とは何であろうか? 京都の庇とはいかにあるべきか? 
京都だから…条例にあるから…という思考停止に陥る前に、これらの要素の意味と可能性を一つずつ、有名無名問わず具体的な建築を参照しながら、あらためて検討してみたい。

(構成・執筆:柳沢究・魚谷繁礼・池井健)

京都絶対領域 1:庇

(『京都だより』2011年7月号、京都府建築士会)

「庇(廂)」とはそもそも「母屋」に対して、その外側に付加された空間であるが、転じて建物本体から突出した屋根状の要素を指す。「軒庇」「通り庇」「付け庇」「下屋庇」「土庇」「霧除け庇」など、庇といっても形状や位置・用途に応じていろいろな呼び名があるが、本記事では、外壁面に屋根と独立して設けられ、かつ街路に面した「庇」に絞って検討したいと思う。街との関係に主眼があるからである。

京都絶対領域 2:格子

(『京都だより』2011年9月号、京都府建築士会)

「格子」とは本来は角材を縦横に組んだものを指していたが、時代と共に縦方向の部材を間をすかして並べた連子(れんじ)が、主に「格子」と呼ばれるようになった。格子は様々な機能を担うが、伝統的な京町家において裏に格子が設けられることがないように、京都の格子は街路に面しているのが大きな特徴である。本記事では、部材の縦・横・斜めを問わず、外壁面と街路との間に設えられた透過性のある面状の建築要素を「格子」と見なし、その様々な効果を検討したいと思う。

京都絶対領域 3:路地

(『京都だより』2011年11月号、京都府建築士会)

「路地」とは、端的に言えば建物と建物の間を通る幅の狭い道である。京都では「ろーじ」と読んで、表の街路から家の隙間を縫って街区奥へアプローチする袋小路を限定的に指し、通り抜け可能な「辻子(ずし)(図子)」と区別することもある。京都には大小様々の路地空間が数多くあり、それらは京都の都市イメージと分かちがたく結びついている。しかしながら現在、路地は確実に姿を消しつつある。

京都絶対領域 4:犬矢来・駒寄・つばどめ

(『京都だより』2012年1月号、京都府建築士会)

今回は「犬矢来」「駒寄」「つばどめ」といった、京都の家と街路の境界付近に設けられる要素に注目する。いずれも一種の仮設柵であり、街路沿いの壁際に設けられる。
そもそも「矢来」とは、竹や丸太を粗く組み合わせ柵や垣としたものを言う。矢来は「遣らひ」であり、「入るのを防ぐ」の意である。矢来の原形に近いのは、粗く組んだ丸竹を立てかけただけの「つばどめ」であろう。丸竹を割竹にして密に組みあげると「犬矢来」になる。曲面形状のものが今日では一般的だ。つばどめが自立し固定されると「駒寄」である。

京都絶対領域 5:甍

(『京都だより』2012年3月号、京都府建築士会)

今回のテーマはルーフスケープ、すなわち屋根の連なりが形づくる風景である。
「京都のルーフスケープとは?」と問われた時、町家や寺院の「甍(いらか)(屋根瓦/瓦屋根)」が連なる風景を漠然とイメージする人は多いだろう。しかし瓦が京都の街を覆うようになった歴史は、実はそれほど古くない。そしてそのような風景は、次第にイメージの中だけにある風景となりつつある。
瓦屋根に焦点を当てながら、京都の古今の屋根事情を見てみよう。

京都絶対領域 6:表

(『京都だより』2012年6月号、京都府建築士会)

京都で一般的な鰻の寝床状敷地に建つ建物の外表面は、街路に面した「オモテ面(正面・ファサード)」と街区内側に向いた「ウラ面」、その両者に挟まれた2つの「側面」とに、おおまかに分けて考えることができる。今回対象とするのは、京都の街並みを主として構成するこの「オモテ面」である。これまでの回では屋根・庇・格子といった個別要素に注目してきたが、ここではそれらと外壁面や開口部をあわせた複合体としてのオモテ面について考えてみたい。庇も格子もあり色も条例に従ったのに、何故か京都の街並みに馴染まないとしたら、それはオモテ面に「奥行き感」が足りないためかもしれない。

Tags: | ARTICLEs 小論 | 12.09.07

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