「亜洲城市建築史」
『亚洲城市建筑史』主編:布野修司・亚洲城市建筑研究会、译者:胡惠琴・沈瑶、中国建筑工业出版社、2010年
2003年に出版された『アジア都市建築史』(布野修司編、昭和堂)が、このたび中国語に翻訳されて出版されたそうです。定価39元。だいぶお安くなってますね。
見本誌をいただいたのでパラパラ眺めていると、やはり中国語の表記に目がいきます。私がコラムを書いたインドの「ヴァーラーナシー」は、「瓦拉纳西」と表記するようです。ちょっと気になって調べてみたら、玄奘の『大唐西域記』では「婆羅痆斯」となっていました。ずいぶん変わるんですね。ちなみに「ヒンドゥー教」は「印度教」です。たいへん分かりやすくてよい。
余談ですが、この大唐西域記中の婆羅痆斯国の記述の中に、有名な「月の兎」の説話(何も取り柄のない兎は、自らの体を焼いて老人(実は帝釈天)に捧げ、兎のこの振る舞いに感動した帝釈天は、月に兎の姿をとどめたという話)が、現地での言い伝えという形で収録されています(この話はいわゆるジャータカ物語の一つとして、いろいろな古文献に載っているのだけど、中国に伝わる文献の中では唯一「大唐西域記」のみが月と兎の関係に触れていて、インドに伝わる古い話の形を残しているのだとか(水谷真成訳の2巻354p注)。日本にもこれを通じて伝わったのでしょう)
初めてこの話を読んだとき、「月の兎」はてっきり中国起源かと思っていたのが、実はインドまで遡ることを知って驚いたものです。