ほら貝のRC住宅改修
住宅リノベーション, 名古屋市, 2016
名古屋市郊外の丘陵地に建つ、1976年建設の鉄筋コンクリート(RC)造戸建て住宅の改修である。
戦火や三河地震(1945)、伊勢湾台風(1959)の記憶がまだ冷めやらぬ1970年代、RC造の戸建住宅は、耐震・耐風・耐火のために非木造の住まいを望む施主にとって、やや値が張るものの一般的なオプションであったと思われる。1960〜70年代に造成された中部地方の住宅地には、似たようなRC造戸建住宅をあちこちに見ることができる。しかしその後、おそらくは80年代以降の鉄骨造住宅の普及に伴い、RC造の戸建住宅は、いわゆる建築家住宅を除けば、ごく限られたものとなった。同様の事情はおそらく関東や関西の大都市圏にもある程度あてはまるだろう。
現在これらのRC造戸建住宅は、築後40数年を経て更新の局面を迎え、改修されることなく解体されるものも多い。木造住宅やマンションに比べ改修事例が少なく、改修後の姿をイメージしにくいことは、その理由の一つだろう。しかしながら、この種のRC造戸建住宅は、耐久性/プラン改変の自由度/外壁の自由度(特に外断熱との好相性)などの点において、リノベーションの素材として高いポテンシャルを秘めている。
「70年代のRC造戸建て住宅をリノベーションすること」(PDF)
…総じて言えば、RC造戸建住宅は、RC造マンションのように堅固なスケルトンをもち内部のプラン構成の制約が少なく、その一方で、戸建て住宅ならではの外壁や開口部・設備系の改変に融通が効くといった、リノベーション素材としての長所を備えている。…
(掲載:『住宅建築』No.482(2020年8月号)、p.44-57)
ファサード
RCの外壁に断熱を付加し、厚さ30mmの杉板で覆う
1階土間。床は豊田産の赤土を使った三和土。天井はハンダ
土間と造作収納
子供室。ワンルームを造作書架で仕切る
子供室
洗面・浴室。黒いタイルは改修前の浴室タイルを残置
2階。RC壁面は基本的に解体し放し仕上げ
既存の開口部を再編し、奥行きの深い窓台や棚、ベンチに
2階テラス
屋上は古畳を用いたDIY緑化。太陽熱温水システムを備える
※撮影:笹倉洋平
改修前の様子
改修前のファサード
改修前の内観
改修前の内観
内部解体時
内部解体時
内部解体時
天井のハンダの施工
名称:ほら貝のRC住宅改修
所在地:名古屋市緑区
設計:究建築研究室
施工:工作舎中村建築(中村武司・佐藤俊伸)
施工協力:名城大学柳沢研究室
建物概要:住宅・鉄筋コンクリート造・2階建て
建築面積:78.98 m²、延床面積 :116.64 m²
設計期間:2014年12月〜2016年3月
施工期間:2015年4月〜2016年5月
外部仕上げ :
壁面/(既存RC壁の上に)スギ板 t30 無塗装、一部土壁、ガルバリウム鋼板波板
屋根/ウレタンシート防水+古畳(本藁床)
建具/木製建具、アルミサッシュ
主な内部仕上げ:
床/スギ無垢フローリング t30、三和土、桐無垢フローリング t15
壁/既存RC壁あらわし、造作棚、漆喰、PB t12
天井/既存RCスラブあらわし、ハンダ
| WORKs 仕事 | 19.12.15