究建築研究室 Q-Labo.
究建築研究室 Q-Archi. Labo.|京都の建築設計事務所

サントリーニ島 Santorini Is.:Greece, 1996: 究建築研究室 Q-Labo.|http://q-labo.info/memo/picts/000158.php
Copyright © 柳沢究 Kiwamu YANAGISAWA, 2008-2017

サントリーニ島 Santorini Is.:Greece, 1996

サントリーニ島 Santorini Is.:Greece, 1996

エーゲ海に浮かぶキクラデス諸島の一つ、サントリーニ島の町(おそらくイアだったと思う)。
この島は、アトランティス大陸の推定地としても有名だが、建築の世界では何と言っても、ミコノス島と並び、白い家が群生する街並みの美しさで知られる。

僕が「集落」というものに興味をもった切っ掛けの一つは、たしか、大学1年生頃に見た、二川幸夫によるこの街の写真集だったと思う。

建築に興味の無い人さえ魅きつけてやまない、この風景の魅力の源は何なのだろう。

一見して明らかなのは、色だ。
青い空と海と茶色い断崖との間に浮かび上がる白。
地中海の明るさを存分に感じさせるこのコントラストは、単純に色彩的に美しいのだけど、少し建築の視点からも考えてみよう。
白い家は、よく見るとサイズも平面の形も屋根の形も、似ているが、みんな微妙に違う。新しいコンクリート造の家もあれば、古い石積の家もある。しかし、その全てを石灰系のマットな白で塗ってしまうことで、個々の差異を内包しつつ(ここが重要!)、全体的調和がつくりだされている。単純だが、非常に効果的な手法である。サントリーニの住民は外壁を白く保つため、毎年塗り替えることを(法的に?)義務づけられている、ときいたことがある。
この「白塗り込め作戦」はかなり徹底されていて、塀や階段の手摺り、バス停のベンチ(冒頭の写真)に至るまで、人工的な構築物はおよそ白く塗り込められているのだった。

言葉をかえると、白く塗られているところは、人が島というキャンバスに手を加え描いた部分であり、土とか石がみえる白くない部分は、自然のままというか、島のキャンバスの下地がそのまま残っている部分なのだ(もちろんこれは理念的な解釈で、実際には地面にもたくさん人の手が入ってる)。
都市とか集落とか建築というのは、大きな視野で見れば、人間の生活を大地の上に描いたものだ。あるいは、荒れた大地の表面に塩が析出するように、自然の中に人間の生活が結晶したものだ(少なくともそのようなものであってほしいと、僕は思う)。
この建築と自然の根本的な関係が、非常に明快に表現されているがために、サントリーニの街並みは魅力的なんじゃないか、というのが一つの考え。

しかし、ただ「図と地」の対比が効いてる、というだけでは、たとえば日本の郊外団地群だってそうなのだ。サントリーニがそれと違うのは、街並みを構成する建物がヒューマンスケールなボリュームに分節されていることと、それらの組み合わさり方が、自然の造形物に見られるような複雑さを備えている点だ。この複雑さの秘密は、意外にわかりやすい(と思う)。
地形なのだ。より直接には等高線なのだ。ある斜面に道を作る際には、等高線に沿って作るのが一番作りやすい。等高線はだいたいうねっている。そしてそのうねった道沿いに家が並ぶ。一つ一つは「人工っぽい」直方体の家も、それが自然な曲線を描く等高線に沿って並ぶと、いきなり「自然な」ほどよい複雑さを獲得するのだ。

ちなみに崖に張り付いた白い箱だけが家ではない。その奥に、崖をくりぬいた洞窟のような居住空間が広がっているのが、イアの町の伝統的な住居形式である(下図)。洞窟の入口付近に居間や食堂が設けられ、一番奥が寝室になる。街路のようなテラスの一角に建ってる白い箱が、外気を必要とするキッチンや浴室なのだそうだ。

10040901.jpg 『第2版コンパクト建築設計資料集成〈住居〉』(丸善)、p.14より


磯崎新はサントリーニの集落を評して、「偶然えらばれた特殊な地形のうえに、まずひとつの住戸がおかれる。その結果をみたうえで次の住居がかさねられる」、そうして、すべての家が海と太陽に開く窓を持つというルールを守ることで、集落形態が形作られていったのだという(『世界の村と街 no.1:エーゲ海の村と街』A.D.A. Edita Tokyo, 1973年)。
まあ、そこまでシンプルではないにせよ、そういう部分/部分の関係、その場その場の対応の集積で全体が形作られたのは間違いないだろう。このような集落の魅力を建築にも取り入れたいと、ずっと思っている。
そんなことをコンピュータ・シミュレーションによって検討している研究もあるようだ。「種を蒔くような計画」っていいなぁ。使わせてもらおうかな。
 藤木隆明他「ギリシャ・サントリーニ島の集落のモデル化」その1その2(pdf)

磯崎の言う、集落の発生の原初を思わせる風景。
こんなところに家欲しい〜。

Tags: | MEMO 雑記・ブログ , PICTUREs 旅と建築 , SELECTED 選り抜き | 10.03.21 | (4)

この記事へのコメント

はじめまして。私は将来沖縄県の宮古島に移住し、民宿を建てたいと思っています。2年前に訪れたサントリーニ島の建築に魅せられ、このイメージを宮古島の海の目の前で再現したいと思っています。
それには塩害や湿気、カビなど普通のところよりも気を付けなければならないことが多いと思います。何かアドバイスがあれば教えてください。


Posted by: 静佳 | 2012年03月23日 17:57

宮古島いいですねー。行きたいですねー。
沖縄までは数年前に行きましたが、宮古島は残念ながら未踏です。なので詳しくは分からないのですが、おそらく気候の違い、特に降水量と湿度の差が決定的で、同じものをたてるとキツイと思います。

サントリーニ島の住居は、すくない雨、乾燥した温暖な(暑すぎず寒すぎない)気候を前提とした造りです。

たぶん宮古島の降水量はサントリーニ島の数倍以上あり、あのような葺材や庇のない屋根では、雨による建物へのダメージは相当なものになりそうです。
白い壁も雨だれやカビで汚れやすいでしょう。
湿度対策は風通しに尽きますが、サントリーニ島の住居は見ての通りそんなに風通しのよいものではありません。

こういう話をすると、結局その土地の昔からの民家が一番合理的という話になり、それはその通りなのですが、それだけではつまらないというのもその通りですよね。

ただ、一旅行者としての勝手な観点からは、宮古島の海岸にサントリーニ島と同じ建築が建っていても、まったく魅力を感じないと思います。

宮古島の風土と文化にあった、なおかつサントリーニの住居の魅力の〈エッセンス〉が効いた民宿が建っていると、すごくよいですよね。
たぶんそれは外観(形や色)ではなくて、テラスと室内がつながる空間構成であったり、地形との対応だったりするのだと思います。

Posted by: 柳沢 | 2012年03月25日 06:01

貴重なご意見ありがとうございます。
とても参考になりました。確かにおっしゃる通りです。主人が宮古島出身なのでよく帰省するのですが、宮古島の建物はだいたいが汚れています。サントリーニのように観光地という意識があまりなく、白いコンクリートの壁をなかなかきれいに塗りなおすという習慣がありません。その中にポツンと純白の建物があっても魅力はないでしょうね。ただ、私は海外の建物を見るのが大大大好きで、特にサントリーニやミコノスの家々を見たときの感動が強すぎて、忘れられません。
おっしゃるとおりに、テラスや展望や、門や、階段など細かい仕掛けでマネできれば幸いです。一番の魅力は私の中での「最高」の宮古ブルーの海なので、それを活かせるように、色々とこれからアイデアを絞り出して頑張りたいと思います。ありがとうございました。

Posted by: 静佳 | 2012年03月28日 19:00

一度でいいから、こんなすてきな幻想的な家に住んでみたいです!!
  水色、青×白の組み合わせがとてもきれいですね~^^

Posted by: 旅人 | 2012年11月01日 13:57

この記事へコメントする





MENU

MEMO 雑記・ブログ > PICTUREs 旅と建築

MEMO Archives

Tags


Movable Type 3.36

apstars

RSS

..