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現場変更の妙味: 究建築研究室 Q-Labo.|https://q-labo.info/memo/000099.php
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現場変更の妙味


上では天井ボード貼り。下では床暖房の設置。

2009/6/1〜6/7

T邸現場では、内外装の下地、外壁サイディング貼り、床暖房工事などが進行中。
一時の職人過密状態は抜け、新しい現場監督さんも来て、先週のように毎日現場に出る必要はなくなった。でもやっぱり二日と開けずに現場へ行ってしまう。のは、やはり現場が楽しいから。


神楽岡での町家再生や最初期の仕事では、僕自身も現場で竹小舞編みや塗装仕事、ちょっとした大工仕事もやっていた(もちろん素人の域を出ないものだけど)。神楽岡常連の職人連中との付き合いも長い。なので、現場の職人の動き方や考え方がある程度理解できるから、単に見ていても楽しいし、自分が書いた図面を彼らがどう理解しているのか、あるいは伝わってないのか、コマゴマした質問に受け答えしたりしながら確かめるのが、非常に勉強になる。

設計段階で細部に至るパーフェクトな図面を書き上げ、細工は流流あとは仕上げを…というやり方は、設計時と完成時の誤差がなくなるという意味で、一つの理想像かもしれない。けれど、そんなことはパーフェクトな設計者(そんな奴いない)にしかできないし、できたとしてもつまらない。
予測ミスによる修正は当然極力減らすべきだけど、少しずつできあがっていく状態を確かめつつ、職人とやりとりしながら、微調整や大修正を加えながら進めていくやり方は、やっていても楽しいし、それが結果のクオリティにつながるはずと思いたい。

なんだか当たり前すぎて恥ずかしいようなことを書いてるんだけど、書いていて、ああこれはフィールドワークベースの研究とよく似ている、と気付いた。
研究では普通、大まかな仮説(こんなことが分かるんじゃないかという予測)をたててからフィールドへ出向き調査をして、そこで得られた情報を基に、仮説に肉付けや修正を施しながら理論を組み立てていく。これはつまり、「現場・具体/机上・抽象」というとらえ方をすれば、設計と逆のプロセスをやっているんだな、ということ。

もちろん、設計も研究も、両者行き来を繰り返しフィードバックを重ねるから、順序の問題は曖昧になっていく。また、このような行き来はフィールドベースに限らず、いわゆる研究とか分析というもの全般にあてはまることではある。
けれど、僕のやってる都市空間を読解するような研究は、いわば出来上がった空間から設計コンセプトや設計時の条件を推測しようという試みであるから、設計の逆プロセスという側面が特に強い。
そして、空間の読解作業で最も面白いのは、設計コンセプトがストレートに実現された部分よりも、諸事情で変更を受けたであろう部分を読み解くことだったりするのだ。

Tags: | MEMO 雑記・ブログ | 09.06.12 | (0)

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