究建築研究室 Q-Labo.
究建築研究室 Q-Archi. Labo.|京都の建築設計事務所

鞆の浦2(雁木とガート): 究建築研究室 Q-Labo.|http://q-labo.info/memo/000069.php
Copyright © 柳沢究 Kiwamu YANAGISAWA, 2008-2017

鞆の浦2(雁木とガート)

鞆の浦・常夜燈

2009/4/20〜4/26

4/23(木)〜25(土)
今回は港の話。( >> 前回
鞆の浦には江戸期の港湾施設セットがかなりいい状態で残っていて、この歴史的遺産の保存というのが、「架橋計画」反対の根拠の一つとなっている(参考文献)。
その港湾施設セットというのは、常夜燈(灯台)、雁木(護岸)、波止(防波堤)、焚場(ドック)、船番所(監視施設)の5点なんだけど、この中で個人的に目が釘付けになってしまったのが、階段状の護岸、「雁木(がんぎ)」。


インドに行ったことがある人は気付くと思うんだけど、これ、インドの水辺に必ずある階段状施設、「ガートghat」とまったく同じ構造なんですね。
いやー日本にもこういう施設があるとは知らなかった。

(余談ですが、「ガート」は階段形状が一般的ではあるが、舗装した斜面や未舗装の土手などもガートと呼ばれる。つまり平地部と水面を結ぶ斜面状のものの総称なのだと思う。対して「雁木」は、「雁」というジグザグ形状を示す字が使われてるように、階段状のものを限定的に指している。)

ヴァーラーナシーVaranasiのガート


雁木もガートも、主な機能として「護岸」と「水面へのアプローチ」の二つを兼ねている。最大のポイントは階段状であること。この形のおかげで、水位の変化に影響されず、常に水面へアクセスすることができる。また、斜面でなく階段であるがゆえ、そこに座ったり物を置いたりすることがしやすく、「場所」としてのポテンシャルが生まれる。こういった階段状施設のよさのもう一つは、水面に対して、「線」(浮き桟橋のような)ではなく、「面」で接してることだろう。これによって、水辺との関係が飛躍的に多様化しているはずだ。

満潮時と干潮時の雁木


雁木とガートは、物理的形状はまったく同じ、と断言してよい。

では、異なる点に注目すると、設置されている場所の差が一つ。
鞆の浦を含む日本の雁木は、資料で見る限り、海岸、それも内海(特に瀬戸内海)が中心だ。対してインドでは、河や湖・池が中心であり、海の階段状ガートは今のところ見たことがない。
何故かと考えるに、まず雁木もガートも、水位の変動する水辺のための装置だ。
海は満ち引きによる水位変化がある。ただし外洋に面した海は波がきつすぎて、こんな密に水面に接するのは危険すぎるだろう。だから海岸に作られる場合は、瀬戸内のような波の静かな海の、さらに湾状の部分に限られているのだと想像する(だから、インドでも湾状のところには海岸ガートがあるかもしれない)。
河にも大雨や渇水による水位変動はある。インドの河の水位変動はモンスーンに応じた季節的なもので、その水位の差は大きい(数m変動することもある)ものの、変化はゆるやかである。ガートが非常に適している。
それに対し日本の場合は、台風や長雨による突発的で破壊的な増水が多い。「河原者」という言葉もあるように、日本では河辺というのは親しみやすい場所ではなかったのだろう。

もう一つ、使われ方というか認識のされ方が違う。
雁木は、船へのアクセスや荷物の積み卸しなど、港湾施設として見られることが多い。対してインドのガートは、もちろん河では船着き場でもあったんだけど、主に休憩・水浴・洗濯等に供する親水施設として見られている。
(雁木の場合、海だから、生活の中では使いづらいというのはあろう。インドの場合、特に水を神聖視する伝統があるため、それが水面に対する親密さに表れているのだろう。)

鞆の浦について思うのは、沖の波止のおかげか波がほとんど無く、類まれに海がやさしく近いこと。
冒頭の写真、右にある家が海の中にせり出して建っているけど、日本の海でこんなことって普通ありえないでしょう? 日本海だったらちょっと天気が荒れれば、高波が瓦屋根の上からかかりますよ。
そんな近しい海があるわけだから、鞆の浦の雁木は、港湾施設の役割を終えても十分、インドのガートのような親水施設として活躍できそうに思います。だから、雁木に浮き桟橋をかけて使うなんてことはやめましょう。

実は鞆の浦の海岸を見たとき、始めに思い浮かんだのは、インドのラージャスターン州にあるプシュカルPushkarという湖の町である。
さほど大きくない湖の岸が全部ガートになっていて、その背後を町並が包んでいる。湖を囲んだ小さな町。町のどこからでも湖を眺められて、ガートに座ってお茶を飲んで本を読んで昼寝して、観光的な目玉は何もないのに、それだけで何日何日もくつろいでしまうような静かな町だった。

この海と雁木・背後の街を活かせば、そんな滞在型の町に、鞆の浦もなれると思うんだけどなぁ。

Tags: | MEMO 雑記・ブログ , SELECTED 選り抜き | 09.05.05 | (0)

この記事へコメントする





MENU

MEMO 雑記・ブログ

MEMO Archives

Tags


Movable Type 3.36

apstars

RSS

..