居住空間学講座|京都大学柳沢研究室
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世界照明探偵団フォーラム2017 in 京都: 居住空間学講座|京都大学柳沢研究室|http://q-labo.info/kyoto/030_project/000443.php
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世界照明探偵団フォーラム2017 in 京都

2017年6月8日〜10日、世界中から光のエキスパートが集い京都の光について考える「世界照明探偵団フォーラム 2017 in 京都」が開催されました。メインイベントは、最終日の『ライトアップニンジャ』で、これは日常的な生活の場の中に埋もれている景色に少しの光で景観としての魅力を与えようという実験的な試みであり、光の足し算だけでなく時には不必要な光を消したり不快な光を整えることも含め、身近な生活空間のなかに夜の快適さ・美しさをつくっていこうという趣旨のイベントです。
京都造形芸術大学・京都大学・京都市立芸術大学・京都工芸繊維大学が参加し、平安神宮・白川沿い・松原通のライトアップを行いました。京都大学チームは松原通を担当、4月下旬から毎週打ち合わせを重ね、5月には京都造形芸術大学に全チームとスタッフの方たちが集まり案のプレゼンとディスカッション、照明器具の実験などを行いながら、案を完成させていきました。

名称:「世界照明探偵団フォーラム2017 in 京都」ライトアップニンジャ:京都大学チーム作品
用途:建築のライトアップ
会場:京都市下京区松原通
制作期間:2017年4月下旬~6月上旬  展示:2017年6月10日
制作:柳沢研究室/川島快・進藤拓哉・中村奎吾・山田文音・薬師寺由尭、石田研究室/荒岡若奈・杉岡宏輔・遠藤聡・住吉哲郎・小西颯真・徳海史夏・二木皓
指導:前田昌弘、石田泰一郎
主催:照明探偵団
共催:松原通界隈活性化活動プロジェクトほか

フォーラムは三日間に渡って行われ、1日目は京都文化博物館で大学ごとにライトアップ案の発表と、京都の「光の英雄と犯罪者」を探すまちあるきの報告をしました。その後照明のプロの方たちのリレートークも行われました。2日目は大学ごとに案のブラッシュアップと点灯箇所でのライトアップ実験をしました。京大チームは、ストックホルムのアーティスト、Aleksandra Stratimirovic氏とバーゼルの照明デザイナー、Lisbeth Skindbjerg氏と協働して作業を行いました。3日目は洛央小学校の小学生のみなさんとともに行灯作りのワークショップに参加し、最終調整をしてライトアップ本番、という流れでした。

京都大学チームのライトアップ案

松原通は、昔は清水寺への参道として大変栄えており、呉服屋さんなど伝統工芸品を扱う商店が多い通りでした。現在は店の数も減少し、道行く人々も日常的にそこに住む方たちがほとんどになっています。私たちは長い歴史を持つ松原通に光を当て、非日常な空間を生み出すことで日常を浮かび上がらせる、ということを考えました。由緒ある神社や寺、老舗の店舗、町家など松原通ならではの場所をライトアップ対象地に選定しました。それぞれのライトアップ箇所の詳細を紹介します。


因幡薬師(提案制作:徳海・中村・薬師寺)

参道部分

①特徴と歴史/コンセプト
因幡堂に現在奉られている薬師如来像は、かつて橘行平によって因幡国の海底から発見されたというエピソードがあります。因幡堂は松原通からさらに一本通りを入ったところに位置していますが、因幡堂に続く参道となる部分に「因幡国の海」をイメージしたライトアップを行うことで、海中を巡ってから本堂の薬師如来を拝むというエピソードを実際に体験してもらおうと考えました。


(因幡国の海/因幡堂公式HPより

②ライトアップ案
まず路面全体にプロジェクターを用いて水面の動画を投影することにより、海原を表現。また、参道の両サイドに実際に水の入ったバケツを多数設置し、底から照明を当てることで、建物の壁面に水面の揺らめきを映し出しました。

③準備とライトアップの実施
バケツを使用した照明は、実験段階ではなかなか思うように光で水面の揺らめきを表現できず、アイテムや方法を変えながら何度も試行錯誤を繰り返しました。プロジェクター照明は、4基で想定通り路面全体に投影することができ、水面の上を歩くことで楽しめる仕掛けを実現できたかなと思います。

本堂部分

①特徴と歴史/コンセプト
因幡堂はかつて能や狂言の舞台として使われていたので、参道と同じく歴史を表現するという意味で、本堂やその周辺に「能舞台」をイメージしたライトアップを行おうと考えました。能の舞台では柱や舞台空間にそれぞれ固有の名前が付いているなど、「柱」や「舞台」に大きな意味合いがあるので、今回のライトアップでもそれらを意識して照明方法を工夫しました。

②ライトアップ案
コンセプトの能舞台を表現すべく、4本の柱と舞台をイメージした空間をスポットライトを用いて照らします。また、普段はライトアップされていない提灯や灯篭なども照明を入れて活用しました。

③準備とライトアップの実施
前日の試験点灯まで一部の機材を試すことができなかったので思うようにライトアップできるか不安でしたが、実際に照らしてみるとしっかりと奥行き感が出て落ち着いた印象になり、能の雰囲気に合う演出ができて良かったです。


今井邸(提案制作:川島、杉岡、二木)

①問題意識
1・2・3階で外壁の色が黒・赤・白と変化していることが魅力ですが、夜になるとそれぞれの色が目立たないうえに、3階に至ってはあることすら気づきません。ど真ん中にある室外機が不格好。

②コンセプト
ヒューマンスケールの照明を用いて、この町家を構成している要素(3階建て、色の違う外壁、格子、室外機、和傘(昔この町家で作られていました))に注目しライトアップすることで、「ひっそり遺産」とも言える今井邸の魅力を引き出すとともに、生活レベルでの京都らしさを演出することができると考えました。

③ライトアップ提案
1層目は、今井邸の歴史に深くかかわる「和傘」(もしくは洋傘)を用いました。ぼんやり灯る和傘を1階内部で様々な高さで浮かべることで、「格子」を通して、外にうっすら光がこぼれるとともに、開放している土間を通じて人々を中へと誘導しました。また、中がライトアップされることで1階の外壁の「黒さ」を際立たせました。
2層目は、不格好な室外機をあえてポジティブに利用しました。室外機の裏に光源を置き、室外機をシルエットだけにするとともに、2層目を照らし「赤い」外壁を際立たせました。また、通りの向かいから室外機のファンの部分に向かって赤い色の光を放つ光源を置き、室外機を起点として2層目の赤い色の印象を強くしました。
3層目は「白い格子」に着目しました。夜になると目立たなくなる3層目を、格子を裏からライトアップし、格子のシルエットをくっきり浮かび上がらせることで、存在に気づくようにしました。

④準備とライトアップの実施
研究室の小部屋を暗くし、室外機のファンに光を当てる実験を何度も繰り返しました。前
日・当日の準備では、トラブルもあり何度もライトアップ方法が変更になりましたが、メンバーで話し合いながら家の中と外を駆け巡りベストなライトアップを完成することができました。


新玉津嶋神社(提案制作:荒岡、遠藤、進藤)



①神社の特徴と歴史
この神社は、烏丸通から一本入った松原通からさらに入った場所にあり、神社の敷地がL字型になっているのが特徴です。1186年に建てられたこの神社には、和歌と深いつながりがあり、日本の有名な和歌集を編纂した藤原俊成が祀られています。

②コンセプト
①の歴史から、映画『もののけ姫』に登場する木霊が住む森のように、この神社に「和歌の言霊」が住んでいるというコンセプトイメージを考えました。

③ライトアップ案
神社の鳥居部分は足元からの光で、壁に影を映し、烏丸通からの引き込みを意識しようと考えました。
言霊が神社全体に散りばめられていて、ぼんやり明るい参道をイメージしました。手水舎は水が元々あったことから水を思わせる照明を。末社には、秋葉神社という火の神様が祀られていて、この神社では年に一度の火を使った祭りが開かれていることから火を思わせる照明にしました。
拝殿と本殿では、拝殿の砂を青く照らし、和歌の言霊が浮き上がらせようと考えました。本殿は、和歌の言霊の中心があるイメージで、オレンジ色の明るい照明でライトアップしようと考えました。奥にあるのは、松原通の名前の由来にもなった松の木なので、下からの光で存在感を出せるように考えました。

④準備とライトアップの実施
神社という普段の生活から離れたものにライトアップすることを考える機会だったのですが、提案のコンセプトを考える段階から苦労しました。前日当日の準備では、提案から少し変更点もありましたが、地域の方にもご協力いただいて、何とか形になりました。松原通でトップバッターのプレゼンでしたが、しっかり日も落ちて暗くなってくれたので、ベストな状態でプレゼンすることができたと思います。


末富・糸六(aeru gojo)(提案制作:小西、住吉、山田)

①現状(建築とその用途)
末富は老舗の和菓子屋さんです。建築自体は白い壁面を持ち、すぐそばにとても目立つ電柱が立っています。糸六は老舗の糸屋さんです。美しい格子が入った建具が設えられた昔ながらの町家です。2つの建築は斜め向かいに建っています。

②コンセプト
末富では、販売されている6月の和菓子、「紫陽花」と「蛍」を建築の壁面に抽象的に表現しました。いつもなにげなくそこにある電柱にも、存在感を与えました。
糸六さんでは、そこで作られている何百色もの糸の色を思わせるグラデーションを作りました。また糸を昔の木製の糸巻きに巻きつけた「糸灯籠」を作っておられたので、そこからヒントを得て、町家全体が灯籠のように内から光が漏れ出るように考えました。

③ライトアップ案
末富は、各階のバルコニーから上に向けて照らし、色で紫陽花を、光の形で蛍を思わせる表現にしました。電柱は二色の光で照らし、存在感と立体感を出しました。
糸六は、二階はスポットライト+カラーフィルターでグラデーションを出しました。一階は糸灯籠を沢山置き、その色を邪魔しないように格子部分を優しく照らしました。店の中にも糸灯籠を置き、玄関から室内への奥行きも表現しました。

④準備とライトアップの実施
3人で2つの建築のライトアップをしたので、上下の移動も多くかなり準備が大変でした。本番では地域の方々や子どもたちが「きれい!」と言ってくださったり足を止めて写真を撮ってくださったりして、とても嬉しかったです。

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| プロジェクト Project , まち・地域づくり | 17.07.18